スキャニングの仕事をしていると、触るだけでボロボロに崩れてしまう原稿を目にします。
保管庫に大切に保存して紫外線を浴びることは少ないはず。触るとパリパリに割れてしまった・・・このような経験をお持ちの方、その原因は紙自体に含まれている成分にあるかもしれません。
- 紙が崩れる原因は酸にあり!
- 劣化しづらい中性紙
- 酸性紙を中性に変える脱酸処理
- 根本的な解決には電子化がオススメ
紙が崩れる原因は酸にあり!
どうして崩れてしまう紙があるのか?その原因は紙に含まれるセルロースと硫酸アルミニウムという2つの成分に原因があります。
セルロースとは、植物に含まれる繊維。
硫酸アルミニウムは名前通り、硫酸とアルミニウムの化合物です。硫酸バンドとも呼ばれます。
現在、一般に紙と言えば楮などから作られる和紙ではなく、木材をすりつぶしたパルプから作られる洋紙のことを言いますが、紙の製造過程において印刷インクの裏写りやにじみを止めるため、ロジン(松ヤニ)が加えられます。
この工程をサイジングと呼ぶのですが、ロジン単体ではなかなか紙に馴染みません。ロジンを紙に定着させるため効果を発揮するのが硫酸アルミニウム。硫酸アルミニウムを加えることでロジンがしっかりと紙に馴染み、インクのにじみを防ぐことが可能になります。
ところが、硫酸アルミニウムは水分と結合することでセルロースを変質・分解してしまうのです。
紙には通常6〜8%ほどの水分が含まれていて、年を経ることでセルロースの加水分解が進み、さらに結晶化することで硬くなっていきます。硬く柔軟性がなくなった紙は、力が加わりやすい縁の辺りから亀裂が入っていき、さらに劣化が進んていくと、紙自体がポロポロとくずれてしまうのです。
この硫酸アルミニウムが含まれる紙を一般に酸性紙と呼びます。
劣化しづらい中性紙
酸性紙の劣化は、洋紙の本場である欧米で早い段階から問題視されていました。技術の進歩によって、紙から硫酸アルミニムを取り除いた20世紀の中頃に中性紙という紙が開発されました。日本でも70年代から80年代にかけて中性紙が取り入れられていきました。
中性紙はセルロースの劣化に非常に強く、酸性紙の数倍の寿命を持つと言われています。現在では、オフィスで日常的に使うコピー紙を始め、トイレットペーパーなどにも中性紙は使われています。
一方、長期保存を想定していない新聞紙や雑誌に関しては、現在でも酸性紙が使われているケースが存在します。そういった紙を長期保存したい場合、紙自体に特別な処理を施さなくてはなりません。
酸性紙を中性にする脱酸処理
酸性紙が使われている紙の劣化について、最も効果的な対策は紙の中の酸を中和することです。理科の実験で、酸性の水溶液にアルカリ性の水溶液を混ぜると、中性の水溶液に変化する実験をやりましたよね?あれと同じ要領で、アルカリ性の成分を酸性紙に加えることで、中性に近づけることが可能になります。
具体的には、酸性紙をアルカリ性の包装紙でくるむ、アルカリ性の水溶液をスプレーで直接紙に噴射する等の処理を行っています。
また、多くの古書を貯蔵する図書館では、機械によってアンモニアのガスを書籍に噴出することにより、紙に含まれる酸を中和しています。
これらの脱酸処理を行うことによって本の寿命が数年は伸びるといわれています。
ただし、写真については化学反応によって劣化する可能性があるため、脱酸処理を行うことができません。
根本的な解決には電子化がオススメ
脱酸処理をすれば酸性紙の寿命が伸びるとはいえ、なかなかそこまで手間をかけられない・・・という方がほとんどでしょう。
また、劣化に強い中性紙にしても、雨漏りや虫食い、更には手違いによる破損等、酸化以外の原因で消失してしまう可能性はあります。物理的な破損による情報の消失というリスクを、完全に除去することは不可能なのです。
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